本部企画 『一般コーチング学の構築に向けて』 11:00〜12:30

提案(20分×2)+ICT・ディスカッション40分

コーチング学の体系化を踏まえた日本コーチング学会の役割

演者:筑波大学 中川 昭

コーチや選手は、それまでの経験に頼るだけでは高い成果を上げることはできない。というのは、日々の活動で直面する課題は、厳密に言えば過去に遭遇した課題と同じものは1つもないからである。それゆえ、コーチや選手は課題とその解決の道筋が抽象的に示された理論を頭の中に持つことが必要となる。そうすることにより、物事の原理・原則をベースに演繹的な思考を適用して、様々な課題を効果的に解決することが可能となるのである。コーチング学は、このような「スポーツの練習と指導に関する理論体系」を指す。

 スポーツの練習と指導に関する理論の構築は、わが国ではごく最近まで専ら種目ごとで行われてきた。もちろん、種目ごとのコーチング理論の構築は実践との直接的な結びつきを考えると意義を持つことは論を待たないが、それに終始するだけでは、様々な面から限界があることも既にシンポジウム等で指摘されている。そこで、種目ごとのコーチング理論に加え、種目を横断するコーチングの一般理論を構築することがコーチング学の体系化には必要不可欠となる。

本発表では、まず、コーチング学の内容を構成領域と一般化の次元から明らかにし、その上で、特に(スポーツ類型別コーチング学を含む)一般コーチング学の構築に向けて、数ある実践系学会の中での日本コーチング学会の役割と今後の具体的方策について提案をしたい。また併せて、体育・スポーツ系大学・学部が果たすべき役割についても言及したい。

Profile
  • 氏 名:中川 昭
  • 所 属:筑波大学体育系
  • 学 位:博士(体育科学)
  • 経 歴:
    1955年生まれ.
    1977年東京教育大学体育学部卒業,
    1983年筑波大学大学院体育科学研究科単位取得退学.
    大阪教育大学助教授,筑波大学体育科学系助教授を経て,現在,筑波大学体育系教授.
    大学執行役員体育系長(2012年~2018年),体育専門学群長(2018年~現在).
  • 委員歴:
    日本コーチング学会会長(2017年~現在)
    日本体育学会副会長(2019年~現在)
    茨城県競技力向上対策本部委員(2018年~現在)
  • 論文/著書:
    <著書>
    オドノヒュー:中川昭監訳,橘肇・長谷川悦示訳(2020)スポーツパフォーマンス分析入門-基礎となる理論と技法を学ぶ-.大修館書店.
    中川昭・古川拓生・髙橋仁大(2019)球技におけるパフォーマンスの分析.日本コーチング学会編,球技のコーチング学.大修館書店,pp.111-141.
    中川昭編(2017)コーチングにおけるマネジメント. 日本コーチング学会編,コーチング学への招待, 大修館書店, pp.293-328.
    <論文>
    中川昭・古川拓生・嶋崎達也・大垣亮・ 知念莉子(2019)ラグビー競技に関する科学的研究の現場への応用.Strength & Conditioning Journal, 26-7:2-12.
    Shimasaki, T., Chiba, G., Furukawa, T., and Nakagawa, A.(2017)Change in ball continuity situations in breakdown in world-class rugby-Focusing on the number of players involved and time required to get the ball out-. Football Science, 14:24-33.

一般コーチング学、測定スポーツ・コーチング学、陸上競技コーチング学

演者:日本大学 青山清英

日本コーチング学会では、長年にわたる議論を経て2017年に日本では初の本格的な一般コーチング学の内容をまとめた『コーチング学への招待』を上梓した。この際、日本コーチング学会では一般コーチング学とあわせて種目類型別のコーチング学を測定スポーツ、評定スポーツ、球技として刊行する計画が立てられていた。このなかで本年、他の種目類型に先駆けて『球技のコーチング学』が刊行されたことは周知の通りである。今後、『測定スポーツのコーチング学』、『評定スポーツのコーチング学』が続けて刊行される予定である。また、我が国においてはさまざまな個別種目の学会が存在するが、日本陸上競技学会では他の個別種目に先駆けて2020年に『陸上競技のコーチング学』を上梓した。

このようなコーチング学を取り巻く現状をふまえ、今回の発表では『コーチング学への招待』、『球技のコーチング学』の内容をふまえた『測定スポーツのコーチング学』の基本構想を示し、これをまとめる際の問題点についてふれる。あわせて編集委員を担当した『陸上競技のコーチング学』の内容を紹介することによって一般理論-種目類型別理論-個別理論の関係についても私見を紹介したい。

Profile
  • 氏 名:青山清英
  • 所 属:日本大学文理学部
  • 学 位:博士(コーチング学)
  • 経 歴:
    平成4年3月 日本大学文理学部体育学科 卒業
    平成21年3月 筑波大学大学院人間総合科学研究科
    コーチング学専攻修了 博士(コーチング学)取得
    平成23年4月 日本大学教授
  • 委員歴:
    日本オリンピック委員会強化スタッフ
    日本陸上競技連盟強化委員会委員
    日本学生陸上競技連合強化委員会委員
    日本体育学会評議員
    日本コーチング学会理事長
    日本スポーツ運動学会理事
    日本陸上競技学会理事
  • 論文/著書:
    日本コーチング学会編集『コーチング学への招待』、大修館書店、2017年.
    日本陸上競技学会編集『陸上競技のコーチング学』、大修館書店、2020年.
    日本スプリント学会編集『スプリント学 ハンドブック』、西村書店、2018年.