大会企画 シンポジウム
『コーチングの現場が求める知の創出と活用を考える』

基調講演40分+ICT・ディスカッション40分

実践現場において個別性を扱うための「第2種の科学」の提案

演者:鹿屋体育大学 山本正嘉

 私は「トレーニング科学」をキーワードとして、2つの体育大学で40年近く教育と研究に携わってきました。そこで悩み続けてきたことは、選手のことを考えるほど科学からは離れていってしまう、そして科学のことを考えるほど選手からは離れていってしまう、というトレードオフの問題でした。

 これを解決しようと試行錯誤してきましたが、最近ようやく一つの結論にたどり着きました。この考え方を用いるようになってからは、座学でも学生が話をよく聴くようになり、競技力の向上にも寄与できることが多くなりました。研究においても、自分がより納得できるような形になってきました。

 科学とはそもそも、個別性を排除して普遍性(法則)を求める行為です。この性質は、アスリートのアイデンティティともいえる個性とは離反する宿命にあります。この矛盾をどう解決すればよいかがわからず、悩み続けてきたのでした。これは私に限らず、多くの方が持っている悩みではないかと思います。

 解決の鍵は、普遍性を扱う科学(第1種)と、個別性を扱う科学(第2種)の2つがあると考えればよい、ということでした。両者をうまく組み合わせて使うと、きわめて多様な可能性が開けると考えています。この考え方について、具体例も交えながら紹介し、会場の皆さんと意見交換ができればと考えています。なお、詳細については以下の書物で述べているので、ご覧いただけると幸いです。

福永・山本編著:体育・スポーツ分野における実践研究の考え方と論文の書き方,市村出版,2018.
(山本正嘉:体育・スポーツの実践研究はどうあるべきか,pp.8-30.

Profile
  • 氏 名:山本正嘉
  • 所 属:鹿屋体育大学スポーツ生命科学系・教授
  • 学 位:博士(教育学)
  • 経 歴:
    東京大学教育学部 体育学健康教育学科卒業(1982年)
    東京大学大学院 教育学研究科 体育学専門課程修了(1984年)
    国際武道大学・助手、講師、助教授(1984~1998年)
    鹿屋体育大学・助教授、教授(1998年~現在)
    同・スポーツトレーニング教育研究センター長(2006年より兼務)
  • 委員歴:
    日本山岳スポーツクライミング協会医科学委員、国立登山研修所専門調査委員、
    日本山岳ガイド協会特別委員など
  • 受賞等:
    秩父宮記念山岳賞、日本登山医学会奨励賞、共同受賞として日本トレーニング科学会賞、
    日本コーチング学会賞、日本体力医学会賞など
  • 論文/著書:
    単著として『登山の運動生理学百科』(韓国語、台湾語、中国語への翻訳版あり)、『登山の運動生理学とトレーニング学』、編著として『体育・スポーツ分野における実践研究の考え方と論文の書き方』、共著書として『身体運動のエナジェティクス』、分担執筆として『スポーツ選手と指導者のための体力・運動能力測定法』『高所トレーニングの科学』『人間の許容限界事典』など